先日、3.17、秦野へお詣りに行ってきました。
ルートは拙宅→世田谷線→小田急線→神奈中バスで蓑毛まで。と言う、比較的シンプルな行程です。が、遠いです。なんやかんやで秦野に着くまでに2時間弱、そこで30分ほどバスを待って20分以上ゆられて蓑毛のバス停です。ただ、全行程、座れたのが救いではありました。
 まず、世田谷線。

 世田谷線は沿線に招き猫発祥の地である豪徳寺があることから、招き猫で車両をラップした編成が一つだけあります(多分)。外見だけではなく、車内にはピンクで猫の足跡があしらわれているんです。なんとも幸先の良いスタート!と思って、山下駅へ。ここで小田急 豪徳寺駅へ乗り換え、各駅停車から新百合ヶ丘駅で急行(多分)に乗り換え、そして秦野へ一直線!ですが…ふと車内のアナウンスで目を覚ますと「次は渋沢です」。つまり、秦野の駅を出発した直後の車内アナウンスだったのです。「アッチャー」です。が、仕方ない、渋沢まで進んで、秦野に戻ります…。ここで10分のロス。
 本当に久しぶりに郊外に出てきたので、秦野の街でも何か新鮮に感じられますね。で、概ね昼食時間だったので駅コンコースのマックにIN。モバイルオーダーでシートに運んでもらって、とりあえずバスの時間を確認…。うっ、一時間に一本!今、速攻で食べ終えれば何とか間に合うかもだけど、貴重な昼飯はゆったりしたいと言う煩悩が私を「次にしよ!」と決断させます。暫くのんびりして、バスのりば近くの喫煙所で時間を潰しつつ、ルートを確認します。終点 蓑毛のバス停からは近いようですが、途中にある「鳥居前」と言うバス停が気になります。「神社があるなら、帰りに寄ろうかな」と考えながら、ようやくバスの発車15分前。始発のバス停ですから少し早めに行けば座れるな。と考えて移動開始。
 と、もう既にバス停には10人ぐらいが並んでいます。本数が少ない分、乗り遅れよりは待つが正しい。ということなんでしょうか。暫くすると「ヤビツ峠」方面のバスが同じ停留所に入ってきます。そして、私の目は「ヤビツ峠」に釘付けに。と言うのも、こんな私ですが、以前はロードレーサーに乗るサイクリストだったので、クライマーと言うより登り坂中毒の通称「サカバカ」の皆様の聖地!なのです。私も坂道は好きでは無いものの、やはり登りきった後の達成感と、帰り道=下り坂の爽快感は最高です。今は、多分、乗るだけでも怖いロードレーサーですが、キックボードでも楽しいかもなどと妄想しながらヤビツ峠方面のバスを見送る事に。と、ここで気づきます「あ、中のり前降りだ」。都内住みですと均一料金制なので気にせずSuicaを「ピッ」とやれば乗車完了ですが、そうはいかない…。整理券を取るのか、それともSuicaを先に「ピッ」とやって、降りる時にも「ピッ」とする方式なのか…。ヤビツ峠行きのバスに乗る人を観察です。が…。誰もSuicaをピッとしません。「あれ?Suica使えない?」とバスの表示を見ると、確実に交通系ICカードが使えることになっている。のに…あれ?これで、少しドキドキが増します。ただ鬱による動悸とは違い、ちょっとしたスリル感ですね。気持ちは落ち着いています。そして目的の秦20系統のバスが。行き先は蓑毛!間違いありません。前の人を観察しながら乗ります。すると、殆どの人が「ピッ」っとやってます。間違いない!私も「ピッ」とやって乗り込むことに。
 バスは暫くして発車。ほぼ全員が座っていてのどかな春のバス旅スタートです。山桜か河津桜か、梅や桃とは違う花がアチコチで満開になっています。気持ち良いです。できれば帰りは歩いてみたい道です。と、「次は鳥居前」とアナウンス。俄然、目は神社探索モードに切り替わります。が道路にはたしかに鳥居が有るのですが、お社がありません。玉垣も見えず、幟も見えません…。不思議です。こうなったら帰り道に試すのが吉!と思ってバスに揺られ続けていると直ぐに「蓑毛」到着です。「みのげ」です。
 何というのか…聖域感がヒシヒシと伝わってくるような、そんな不思議な空間です。そしてGoogle Mapを開き、目的地の仏乗院へのルートを探します。と、道筋はバス駐車場の脇を通る県道を渡って、まっすぐ川沿い、途中、なんだか川を横断するような表示になっていますが、迷子になる可能性は無さそうです。安心してGO!です。
 県道を渡って仏乗院への道の入口には「東京少年キャンプ連合発祥の地」と札のついた男の子の銅像。一瞬、軍服?と思ったのですが、どうやらカブスカウトの制服っぽいですね。「あー、ガキの頃はキャンプさせられたなぁ」と子供の頃を思い出しつつ仏乗院へ向かいます。が、急に腹が…。お寺でも借りられるのでしょうが…、バス停にもトイレが有ったなぁ…。と徐々に額に汗がにじみ出てくる中で思案。私の中のシミュレーションでは、
A. バス停側は安全に間に合う。が、こういう場所のトイレは汚い。そして汚いトイレで用足しができない私。
B.   お寺だと間に合うかどうか微妙。そして貸し出してくれるトイレが和式なら、やはり厳しい…。
という二択。ほぼ究極の二択。脂汗を龍の手ぬぐいで抑えつつ、選択肢AでGO。バス停へ戻ります。
 トイレは幸い他の人もおらず、待ち時間ZERO。そして、そして奇跡的なくらいキレイです。これはきっと「お前の中の穢を全部だしてからお山に登れ」という仏様のご指示に違いない。と考え、懸命に腹の中身を出し切ります。うーん、こんなビロウな話でごめんなさい。でも、スッキリしたのと同時に、穢れも祓いきれた気がしてくるものです。そして、トイレはキレイに使いましょう!と便座などをペーパーで拭いて辞去。改めて仏乗院へと向かいます。
 途中、マス釣り場があります。私も嫁も川魚が好きなので「今度、来ても良いかもなぁ」などと思いつつ、全くひとけの無い様子に不安を懐きつつ少し歩くと何かの小屋が…。ん?と見るとうさぎです。
蓑毛 マス釣り場 うさぎ小屋には「うさぎの餌」と書いてあります。が、動物園などにあるような餌は置いてなく、代わりに「シロツメクサ…」など、餌になる植物の名前が羅列されているんですね。「好きに餌を上げてね」ってことでしょうか。でもまだ春浅いこの日には、餌に良さそうな草が見当たらず、写真だけで終わり。まだふっくらモフモフした姿は可愛いもんですよね。
 この小屋を過ぎると道標が「←大日堂」「↑大山」(だったかな?)と書かれています。「大日堂?仏乗院のかな?」と思いながらもGoogle Mapを見ると↑を指しているので、まずはGoogleを信用してみます。
 と、ようやく見えてきました。
仏乗院

まるでお稲荷さんのように赤い幟がバリバリに立ってます。ご利益ありそうな雰囲気ですね。で写真の左側の階段を登ろうと思ったら「御朱印はこちら」みたいな貼り紙が門のところに。そして、郵便受けには「山門が閉まっている時には御朱印料と返信用の封筒を入れてください」と言った貼り紙があります。写真に写る門が閉じていれば、ここからの遥拝で終わり。再びのドキドキです。そして山門に手を掛けると…開きました!入れます。そして階段を登って本堂が見えてきます。が、その手前に又も扉が…。開け方が判らない。もしかして鍵、掛かってる?と思い、アチコチを見てみるとフックで閉められているだけなので、こうして漸く境内に入れました。まずは千手観音が祀られている本堂に手を合わせ、お稲荷さんの祠にも手を合わせます「もし御朱印を頂けなくても、大丈夫です!」と申し上げて、背後の寺務所を見るとお嬢さんが執務中。そしてこちらの視線に気づくと窓を開けて「御朱印ですか?♪」と声を掛けてくれます。「はい。大丈夫ですか?」「ええ、書き置きになりますが」と言うことで日付を頂いて受領!これで御府内八十八ヶ所の最遠のお寺へお参りした証拠が!😁。
 そして「途中、鳥居前っていうバス停で鳥居を見たんですが、お社はあるんですか?」と尋ねると「うーん、よく解らないです♪」。また「途中、大日堂って表示も見つけたんですけど、こちらの関連ですか?」と重ねて尋ねると「うーん、それもよく解らないです♪」。なんだか、気持ちいいくらい謎が深まります。そして「ちなみに、ここから秦野駅まで歩くのは無謀ですかね?」と聞くと、こんどはハッキリ「無謀ですね」とのこと。ただ、途中、花や興味をそそる場所があったので、途中まで歩いてみようかなぁ。と考えて辞去。
 そして、謎の大日堂へと向かいます。下り坂を少し進んで表示の通りに行こうとすると木道があり、その先が川。川には幾つかの石がゴロッとしていて、まるで飛び石のような配置になっていますが、最後の石からはジャンプをしないと無理っぽいんです。そして飛び石自体も、石の上に木の葉や苔が生えていて安定していません。更に言えば鬱を患って以来、瞬発力が落ちているのは実感しています。そうしている間に膝が笑ってきます…。ここで今日、二度目の二択。前に進む(ジャンプ!)、後ろへ戻る(足場の悪いところで方向転換)。リスクは後者の方が低そうです。ここでジャンプに失敗したら、洒落になりませんし、怪我もしたくない。背中のリュックにはMacも入ってますし、手にはiPhone。濡れず済ませるため、ガクガクする足を無理やり逆方向に廻してUターン。うさぎ小屋へと戻ります。するとふと思い出しました。キャンプ発祥の地のすぐ近くにも「大日堂」の表示があったのです。Uターンしている最中は「ギブですなぁ。残念」と思い込んでいましたが、望みが消えた訳ではありません。少し歩みを早めて(急な下り坂なのでブレーキを掛けなければ自然、身体は早く進みます)県道へ。そして大日堂の表示を見つけて僅かに進むと左手に宝蓮寺の寺号と下り坂、右手に大日堂が。
 この大日堂、まずは仁王門が立派です。書かれている由緒書では慶派にも通じる平安時代の作とされていて、とても立派な朱塗りの仁王様です。そして、仁王門をくぐって大日堂にお詣り。小窓からは「薬師如来」の文字が見えたので「あれ?大日如来じゃないの?」とか思いつつ、境内の案内板を見ると不動堂や閻魔堂があるようです。そして、その先には御嶽神社が。
 さっきの川ジャンプ問題で一気に疲労が来た足ですが、できるだけ全部、見てやろう!と思ってお不動さんや十王様達、そして御嶽神社へと足を運びます。疲れます。不整地の上り下りは鬱の影響か平衡感覚に若干の不安がある身には厳しい。そして、よくよく見るとアチコチに「宝蓮寺」の文字があります。「あー、道の反対側のお寺の持なのね」と、参拝できる限りを参拝して、宝蓮寺さんにもお参りします。
 宝蓮寺さんは臨済宗建長寺派のお寺。派は違いますが、広尾の香林院さんで高橋由一画伯のお墓参りをしょっちゅうやっている分、何かホッとする空気に包まれます。本堂に手を合わせ、寺務所と思しきところでインターホンを鳴らし「御朱印を頂けたら」と申し上げると「うーん、今日は…ちょっと」と言われ「では改めて参ります」と、ちょっと残念感はあるものの、善き空気に満足しながら後に戻ろうとすると正面からお坊さんが歩いてきます。どうやら尼僧の様子。偏見かもですが禅寺で尼僧?きっと他のお寺からの訪問かな?とか思いつつ「こちらのお寺の方ですか?」と尋ねると「そうです」。ビンゴです。凄いタイミング。「先程、御朱印をお願いしたら、今日は難しいとの事だったのですが」と正直に申し上げると「お帳面をください」と言われ内心「超ラッキー!じゃん」と思い、先程取り出していた御朱印帳をお渡しすると、では中でお待ち下さい。と本堂脇の入り口に案内されます。ふっくらした座布団が置かれ、それだけで救われた気持ちです(それだけ川で体力を消耗していたって事ですね)。そして開かれた扉から境内を眺めているとベンチが置かれ、先程の大日堂とは全く違う明るい境内に心の中の力が抜けていきます。そして段々と「うん。今日はここでフィナーレでOKだね」と書き上がりをのんびり待つことに。
 そして数分、先程の尼僧さんが現れて二面の御朱印を示して頂けました!(これも意外でラッキー)。そのうちの一面は大日堂で祀られている五智如来の前立ちになっている薬師如来。もう一つは、役行者こと役小角にゆかりの地蔵菩薩という。山に来たら聞きたくなってしまう「役行者」と言うお名前。その作と言われるお地蔵様が…。見落としてた(💧)。
 そして尼僧がご住職であること、またお寺の手提げ袋に色々と書かれている内容(由緒書のような事)をご説明頂きました。東京で五智如来と言えば如来寺の大仏(おおぼとけ)ですが、その違い(というか組み合わせ)があって、一般には阿閦・宝生・阿弥陀・釈迦・大日如来ですが、如来寺では阿閦如来の代わりに薬師如来が祀られています。ところが、意外なところで「一般」の組み合わせに出会えていたんですね…しみじみ。阿閦如来様には中々お会いできずにいたので、小窓から覗いただけですが、この目に入っていたのかと思うと感動しきりです。が、何故か…いや、これ鬱あるあるなのかもですが、感動が表にでません。役行者や阿閦如来、平安期の仁王様など元々は参拝予定では無かった宝蓮寺で出会えるとは。ご縁なんですかねぇ。
 そして、これだけアチコチのお寺にお詣りしていながら、多分、尼僧がご住職をされているお寺は初めてですし…(女性の宮司さんには何人もお会いしてきましたが)。

 幸先の良いスタートから、穢落としをして、そして思いも寄らない素敵なお寺と巡り会えたことは、嬉しいですね。もちろん、仏乗院も良いお寺なんですよ。ただ、地に根ざした宝蓮寺さんは、開山以前からの歴史が秘められているようで、帰宅後に調べれば調べるほど「謎が深まった」という感じです。また、お伺いしたいと思います!